北関東のキャリア戦略2026-07-08 公開監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

40代・50代からの物流業界転職 — 体力の現実と、後悔しない選び方

「もう40も半ばなんで、今さらトラックとか、体力的に厳しいですよね」

北関東で相談を受けるたびに、僕はいつも同じ数字を返します。トラック運送事業に携わる男性運転者の平均年齢は、全日本トラック協会の調査(2023年度版)によれば49.0歳。皆さまが「今さら」と思っているその年齢は、実はこの業界の平均そのものなのです。40代・50代は物流業界において「遅れて挑戦する側」ではなく、すでに現場を支えている中心層です。この事実からスタートしないと、話がずれます。

とはいえ体力面の不安が的外れかというと、そうも言い切れません。今回は、体力の現実・企業側が求める経験・年収の目安の3点を、公的統計と現場の実感を突き合わせながら整理し、北関東で40代・50代が後悔しない選び方を示します。

0. 前提 — 「中心層」であることと「無条件」であることは別

まず前提を揃えます。物流業界が40代・50代を歓迎するのは、若手が入ってこないからです。厚生労働省「職業安定業務統計」ベースで見ると、自動車運転従事者の有効求人倍率は近年おおむね2倍台後半で推移しており、全職業平均を大きく上回る水準が続いています。人手不足は年齢の壁を確実に下げていますが、「誰でもいい」わけではありません。企業側は年齢を理由に断ることはしない代わりに、体力・経験・免許の3点は今まで以上にシビアに見ています。ここを取り違えると、「歓迎ムードなのに実際は厳しい」というギャップに戸惑うことになります。

1. 体力の現実 — 「若い頃の自分」と比較しない

体力面の話を率直にします。長距離幹線輸送や重量物のバラ積み・バラ卸しは、20代・30代の体力を前提に設計された仕事です。ここに40代・50代から挑戦する場合、最初の1〜3ヶ月は誰でもきついというのが僕の体感値です。一方で、物流業界全体で見ると、台車・ハンドリフト・コンベア・パワーゲート付き車両といった設備の導入が進んでおり、「力で運ぶ」から「仕組みで運ぶ」への移行が体力負担を年々下げているのも事実です。

1-1. 判断の軸は「20代の自分と比べてどうか」ではなく「今の自分の体力で、この職種の負担に見合うか」です。求人票の「未経験歓迎」だけでなく、実際の積み下ろし方法(手荷役かパワーゲートか、台車の有無)を面接で必ず確認してください。ここを曖昧にしたまま入社すると、体力のミスマッチが早期離職の最大の原因になります。

1-2. 逆に、倉庫内のフォークリフト作業、ルート配送、構内作業、配車管理といった職種は、体力負担が幹線輸送よりも明確に低く、40代・50代からの転職先として現実的な選択肢です。「物流=きつい」という一括りのイメージを外し、職種単位で体力負担を見極めることが最初の一歩です。

2. 企業が求める経験 — 「免許」より先に見られていること

2つ目は、企業が実際に何を見ているかです。中型・大型免許があれば有利なのは間違いありませんが、それ以上に人事担当者が重視しているのは「安全運転の継続実績」と「体調管理の自己申告の正直さ」だというのが、僕が採用側と話していての実感です。無事故無違反の期間、直近の健康診断の結果、これまでの職務での欠勤率——これらは面接で率直に聞かれます。誤解がないように申し上げると、体力に自信がないこと自体はマイナス評価にはなりません。自分の状態を正確に把握し、正直に伝えられる人を企業は求めています。

異業種からの転職の場合、フォークリフト免許・玉掛け・危険物取扱者といった資格の有無が、未経験でも即戦力に近い評価を得られるかどうかの分かれ目になります。北関東は倉庫・製造業が多い土地柄、資格取得支援制度を持つ企業が比較的多いというのも1つの追い風です。

3. 年収の目安 — 何を我慢して、何を取るか

年収の話に移ります。全日本トラック協会「2023年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」によれば、一般貨物運送事業の男性運転者の1ヵ月平均賃金は345,400円、年間賞与を加えた月額換算では380,000円(年収換算でおよそ456万円、令和5年度・当メディアによる目安計算)となっています。この水準は、深夜手当・長距離手当といった変動給に支えられている部分が大きく、日勤中心・近距離中心の職種を選ぶと年収レンジは一段下がるのが実際のところです。

3-1. 40代・50代の場合、僕がお勧めしているのは「初年度の年収」だけでなく「5年後にどの職種にいるか」まで含めて考えることです。倉庫内のリーダー職、配車管理、安全指導員といったポジションは、体力の低下が年収に直結しにくく、経験年数がそのまま評価につながる職域です。目先の月収と、体力が落ちた後も続けられる仕事かどうかは、分けて計算してください。

3-2. 未経験から幹線ドライバーとして入る場合、最初の年収は前職より下がることも珍しくありません(目安として月2〜4万円程度、当メディアの独自整理による目安値で統計値ではありません)。この下がり幅を「学び直しのコスト」として一定期間受け入れられるかどうかは、事前に家計とすり合わせておくべき論点です。逆に、フォークリフトや玉掛けなどの資格を持って倉庫内職種に転職する場合は、前職の年収を維持できるケースも珍しくないというのが、僕が相談を受けてきた中での実感です。

4. 北関東という土地の事情 — 「経験者不足」がチャンスになる

群馬・栃木・茨城は、高速道路の結節点として物流施設の新設が続くエリアであると同時に、地場の中小運送・倉庫事業者も多く、経験豊富な40代・50代の即戦力を切実に求めているのが実情です。若手の採用が全国的に難しくなる中、地場事業者ほど「教育コストをかけずに即戦力になる人材」を評価する傾向が強く、これは異業種からの40代・50代にとって追い風になります。

特に、配車管理・安全管理・教育担当といった「現場を離れつつ経験を活かす」ポジションは、事業者側でも人材が不足している職域です。ドライバー経験そのものがなくても、製造業や小売業でのマネジメント経験があれば、こうしたポジションへの応募は十分に現実的な選択肢になります。

もう1点、率直に申し上げると、北関東の地場事業者は東京都心部の大手に比べて採用の意思決定が速いという特徴があります。面接から内定までの期間が短く、体力面の懸念があっても、面接での対話を通じて丁寧に判断してくれる会社が多いというのが僕の実感です。大手の画一的な採用基準に不安がある方は、地場事業者を優先的に候補に入れることをお勧めします。

5. 後悔しない選び方 — 面接で確認すべき5つの質問

最後に、実務パートとして、面接で確認すべき質問を整理しておきます。①「積み下ろしは手荷役ですか、それとも設備がありますか」(体力負担の実態確認)。②「同年代・同じキャリアで入社した方は現場にいらっしゃいますか」(自分と近い人の定着実績)。③「配車・安全管理など、将来的に異動できるポジションはありますか」(5年後の逃げ道の有無)。④「健康診断や体調不良時の対応はどうなっていますか」(体調管理への理解度)。⑤「資格取得支援はありますか、実際に使った人はいますか」(制度の実在確認)。

この5つに具体的に答えられる会社は、40代・50代の受け入れに慣れている会社です。逆に、抽象的な答えしか返ってこない、あるいは年齢の話題を避けたがる会社は、実際に入ってから体力面のミスマッチに苦しむリスクが高いというのが僕の経験則です。質問を重ねること自体が、あなたの本気度の証明でもあります。遠慮せずに聞いてください。

6. 実務パート — 応募前にやっておく3つの準備

ここまでの整理を、実際に動くための手順に落とし込みます。所要時間の目安つきで3つです。

①直近3年の健康診断結果を手元に用意する(10分)。体力に関する不安を面接で正直に伝えるためには、まず自分の状態を客観的な数字で把握しておく必要があります。血圧・視力・BMIといった基本項目だけでも、面接での受け答えの説得力がまるで変わります。

②求人票の「積み下ろし方法」欄を確認し、不明なら問い合わせる(15分)。「手荷役あり」と書かれていない求人でも、実際には手作業が発生するケースは珍しくありません。応募前に電話一本で確認する一手間が、入社後のミスマッチを防ぎます。

③自分のこれまでの経験を「体力」「経験」「管理能力」の3枚のメモに分けて書き出す(30分)。異業種からの転職の場合、この3枚が面接での自己PRの土台になります。特に「管理能力」のメモは、配車・安全管理といった将来のキャリアの伸びしろを面接官に示す材料になります。

(結論)40代・50代は「遅い挑戦者」ではなく「中心層」

まとめます。①物流業界の運転者平均年齢はすでに49.0歳で、40代・50代はすでに業界の中心層である。②ただし体力面の現実は職種によって大きく異なり、「物流=きつい」という一括りの理解は誤り。③企業が見ているのは年齢そのものより、安全運転の継続実績と自己管理の正直さ。④年収は初年度の数字だけでなく、5年後にどの職種にいるかまで含めて考えるべき。⑤北関東は経験者不足という追い風があり、配車・安全管理といった「経験を活かすポジション」への転身も現実的。

冒頭の「今さらトラックとか」に戻ります。今さらではありません。この業界にとって、40代・50代はすでに標準です。確かめるべきは自分の年齢ではなく、自分の体力と経験に合った職種を選べているかどうか。見分ける目さえ持てば、選択肢は思っているよりずっと広いというのが、僕の率直な実感です。

皆さんいかがでしたでしょうか。まずは適性診断で、自分の体力・経験に合う職種のタイプを確かめてみてください。では今日もがんばりましょう。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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